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暗黒大陸と呼ばれた物流業界の今

みなさんは“物流業界”をよくわからない難しい業界だと思ったことはありませんか。配送代行を検討しても、業界用語が多く、他の業界と比べて調べても何だかよくわからない…なんていう経験もあるかもしれません。
かの有名なピーター・ドラッカーに「暗黒大陸」とまで言わしめるこの物流業界について、なぜ暗黒大陸なのか、そして現在はどうなっているのか、ここでは物流業界の昔と今を簡単にですが紹介します。

 

流通・物流は経済界に残された最後の暗黒大陸

 

みなさんはこの言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これは1960年代にマネジメントの父と呼ばれるピーター・ドラッカーがフォーチュン誌のなかで記述した内容です。以降、この言葉は物流業界でしばしば引用される一節になりました。
物流業界の引用は、「物流業界はまだまだ未成熟だから成長の余地がある、事業機会の多い業界ですよ。ほら、ドラッカー先生もそう言ってるでしょ!?」とある種、物流業界のPRとして使われる傾向があります。

ドラッカーが実際どう思い(※原典にあたり詳細を説明することはここでは割愛します。)、また物流業界の関係者がどう考えているかは別として、事実当時もそして今もなお物流業界は暗黒大陸であり続けています。

さて、ドラッカーの一節にもどりこの「暗黒大陸」という言葉について補足します。この言葉は実際「ナポレオン時代のアフリカ大陸についてくらいの知識」という比喩で使われています。つまり、経済界は流通・物流を正しく理解せず、よくわからないことを想像し、時として「妄想」で理解してしまっているのではないか、流通・物流の奥深さを正しく理解すべきではないか、という警鐘だったのです。

しかしこの碩学の警鐘も虚しく、暗黒大陸ではこの50年間“劇的な”変化はありませんでした。製造業では日進月歩に発展したFA(ファクトリーオートメーション)も、物流業界では発展しません。IT革命の恩恵でさえ、おこぼれ程度にも享受できなかったと言って差し支えないでしょう。

なぜここまで変化・発展が進まなかったのか。その原因は物流業界の従属的なポジションや、業務の波動性など多々原因が山積みになり、解決策を講じられないまま結果として暗黒大陸は未踏の地として残されることになりました。

この未踏の地として嫌煙されてきた物流業界が昨今、日本のみならず世界で注目をされる業界となりました。その理由はamazonの影響が多いに関係します。(amazonと物流業界の関係は別の機会にしっかり紹介します。)この影響により、物流業界は暗黒大陸であるという理由からとても面白い、投資熱帯びる業界へと変貌していきます。

 

 

 

リープフロッグ現象の到来

 

みなさんはこの言葉をご存じでしょうか?
リープフロッグ現象の代表的な事例は、発展途上国におけるスマートフォンの普及が挙げられます。
東南アジアやアフリカ諸国では、日本の「黒電話」など旧型のインフラ機器の整備が遅れていました。しかし安価かつ、モビリティ・ユーザビリティの高いスマートフォンが登場した結果、旧来のサービスと競合することなく、新サービスが容易にそして爆発的に普及しました。現在、東南アジアやアフリカ諸国は、日本よりもスマートフォンの普及率が高い地域が数多く誕生しています。同様の事例として、中国内の電子マネーの発展なども挙げられます。
これらの例でみれるように、リープフロッグ現象とは、既存のインフラ整備が無い状態故に、新技術が爆発的に普及することを指します。

そして、世界中の物流業界で今まさにこの「リープフロッグ現象」が起きているのです。

物流業界は様々な理由で開拓を進めることが難しい暗黒大陸でした。結果、IT化や機械化といったこの30年間を支配したテクノロジーの恩恵を十分に受けることができませんでした。しかしこのような状況のため、荒野のまま残された物流業界には、現在の最新テクノロジーと競合する旧来型の設備投資はほぼありません。それ故にこの業界には旧来型の設備に阻まれることなく、最新のテクノロジー投資をしやすい環境が整っているのです。

物流業界を俯瞰する前に、現在まで設備投資を十分に行ってきた業界を俯瞰してみると、物流業界との違いがよくわかると思います。
例えば、自動車産業ではFA(Factory Automation)と言われる生産工程一体型の設備投資を、各カーメーカーはこぞって進めてきました。トヨタ生産方式で知られる世界のTOYOTAも、カスタマイズの多い組立工程こそ20%程度の自動化率ですが、機械加工や溶接加工のなど工程は90%以上自動化しています。これ自体がTOYOTAの競争優位の源泉であり、世界のTOYOTAたらしめたものです。一方、それ以上の改善を目指す時には、既に作り上げた既存の設備が大きな阻害要因になり得る可能性があります。(恐らく、TOYOTAはTOYOTAで解決することになると思いますが、新しい技術を取り込むことの難易度を高める要因の一つではあります。もしさらに興味のある方はテスラモーターを是非調べてみてください。)

では早速、物流業界に話を戻すと、一部の大企業を除き、そして更にその大企業の中のごく一部の特殊な案件を除き、上記のような設備投資はされておりません。日本の物流会社の99%以上は、倉庫と保管用の器具・搬送用のフォークリフト以外は利用していません。それくらいキャンバスは真っ白に残されています。

 

 

物流業界の今

 

物流業界では空前の「ロボット」がブームになっています。この5年間で、物流現場で利用可能なロボットは一気に増加しました。毎年、新モデルが投入され、把握するだけでも一苦労になっています。僅か、5年前までフォークリフト以外の機械に触れること自体が稀であった業界で進化が始まりました。

ロボットの詳細については改めて別の機会で触れますが、ここでは暗黒大陸を開拓するに相応しいロボットの特徴を紹介します。

 

1.集合知型の自己学習システム
2.人間との協同型ロボット
3.導入難易度の低いライトアセット型の投資

 

「集合知型の自己学習システム」という特徴は物流センターでのコミュニケーション能力を飛躍的に高めます。
物流という事業は「モノ(atom)」と「情報(bit)」の接合点です。情報処理上は正しいことが、物理的には必ずしも正しくない、という状況が日々発生します。情報処理として指示されたことを物理的に実現しようとした際、期待した結果を得られないというのは日常茶飯事です。あるべきロケーションにモノがない、入るはずの商品が実際には入らないなど、こうした情報とモノの不一致から起きる問題の解決を図るために「人間」が必要でした。彼らを「管理者」と呼び、管理者は属人的に知識を蓄積していきました。その結果、再現性の低い物流センターが出来上がります。

一方、最近登場したロボットの多くは自己学習機能(AI、機械学習と呼んだりもします。)を搭載しており、この問題を解決し始めています。ロボットが主役として働く物流センターの強みは何と言っても再現性が非常に高くなることにあります。

 

二つ目の「人間との協働型ロボット」という特徴は、物流の難易度をいやが応にも高める「波動」に対する対応力を高めます。物流業と製造業の異なる点は、波動を「一切」コントロールできない事業であり、かつこの波動をコントロールすることではなく対応することで付加価値を高める事業です。そのため、設備投資に期待される要件は、最大波動に対応できるキャパシティとなります。しかし、その投資を行い続ければ閑散期の費用負担に耐えられず非常に高コストな体質になってしまいます。それを回避するために、最低限の需要を充足するだけのラインの一部自動化を行うこともありますが、生産工程が二重化し品質確保に問題が生じ負の連鎖になります。

物流事業における設備投資の理想は、「自然に」人間と協働でき、かつ、投資の規模を柔軟に変更できることが求められます。しかしそのような機械は今までの市場にはほとんどなく、それ故に投資が進みませんでした。
昨今の物流ロボット市場では、この点を非常にうまく解決したものを登場しています。人とロボットが協働で働くことで最大限の効果を発揮するように設計・開発されているものも多く、暗黒大陸への旅のお伴として連れていくのに十分な柔軟性を持っています。

 

三つ目の「導入難易度の低いライトアセット型の投資」という点ですが、これは上記の二つに密接に絡みます。属人的、かつ波動の大きい物流事業では投資リスクがどうしても大きくなります。その為、「多分、うまくいくんだけどなかなか決めきれない…」なんてことが起こり得ます。
この特徴は引き続き業界の課題として残っていますが、最近ではRAAS(Robot as a service)というサブスクリプション型のロボット利用に関する研究も進んでおり、これから数年でさらに導入しやすい市場環境が生まれるのは間違いありません。

 

 

 

物流業界が「暗黒大陸」と呼ばれた当時から今のロボット事情までの概要を、とても軽く触れてみましたがいかがでしたでしょうか?
“よくわからない物流業界”だった印象から、少し興味深い面白そうな業界なのでは?!と、思ってもらえば何よりです。

 

恐らくこれからさらに加速度的に物流業界は進歩していくでしょう。みなさんも新しい事業において、日々試行錯誤して戦っている方も多いかと思います。そんなみなさんの考え方の一助になればありがたく思います。